本・映画の紹介

『裁判小説人耶鬼耶』黒岩涙香著 池田浩士校訂・解説

2016年8月12日

1888年に初版が刊行された涙香の翻案探偵小説。「誤認逮捕と誤判への警鐘を鳴らし、人権の尊さを訴えた最初の死刑廃止小説」と帯にあるように、本書を読み進めると最後に置かれた「萬國死刑廢止協會」の挿画に死刑廃止論者は驚くだろう。130年も前に涙香は原作を超えてこう主張したのだ。
「世に裁判ほど誤りの多き者はなし。誤りと知らずして無罪の人を死刑に処するもまた多し。一たび死刑に処したる後は、死人に口なし。これを知るによしなし。これを知るは再び命を償う道なし。余は足下の如き義に勇む人々が、一日も早く万国死刑廃止協会を設けん事を望むなり。」本誌読者、必読の一冊である。
〔インパクト出版会、 2300円+税〕

  2016年8月12日 15:30:11  [forum90]

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